An Infamous Betrayal

19世紀のロンドン　Miss Beatrice Hyde-Clare は幼い頃に両親を亡くして叔母の家にやっかいになっています。内気で読書好きな彼女は婚期を逃して現在26歳！　Beaは湖水地方のハウスパーティ（一作目の舞台、殺人事件付き！）で知り合った傲慢で全然魅力的とは思わないKesgrave公爵に、なんと恋してしまったことに気が付きました。

身分違いも甚だしいことから、公爵のことは忘れこれまで通りの生活をと思っていますが。そうは問屋が卸しません。だって、ミステリーのヒロインなのですから!!　

ある日、Beaに湖水地方のハウスパーティの参加者が尋ねて来て、「婚約者の自宅でその家に縁のある人が突然死亡した。自殺も疑われるけれど、本当の所を知りたいので調べて欲しい。」と依頼してきました。湖水地方のハウスパーティで起きた殺人事件の犯人を突き止めた彼女の推理力と捜査力を買ってのことでした。

早速、現場の調査に乗り出したBeaですが、関係者各位に聞き込みをするために面会を求めようにも未婚の女性は独りで男性を訪問することはできませんし、相手が女性でも紹介無しでいきなり訪問することもできないため困ってしまいます。

なんとか伝手をと考動しているBeaの前に公爵が現れ、聞き込みに協力しようと申し出ますが

An Infamous Betrayal: A Regency Cozy Historical Murder Mystery (Beatrice Hyde-Clare Mysteries Book 3) (English Edition)

• 作者: Messina, Lynn
• 出版社/メーカー: Potatoworks Press
• 発売日: 2018/08/13
• メディア: Kindle版

Kindle Unlimited で読みました

「公爵さまが、あやしいです 行き遅れ令嬢の事件簿」から始まるシリーズの3作目
一作目に登場した人物（名前を言ってしまうと１作目のネタバレになるため伏せますね）が、突然苦しみだして死亡します。毒殺なのか服毒自殺なのか、死亡した状況からは判断がつかなかったため、死亡現場となった家の関係者がBeatriceに調査を依頼して....

2作目で、ファーストネームで呼び合うようになったBeatriceと公爵の関係はどうなるのか？　も気になるリージェンシー舞台のコージーミステリーです。謎解きを期待するとガッカリする系の本です。リージェンシーの上流階級の社交の様子や、わりと辛辣で口が達者なヒロインとその周囲の人々との会話が楽しく、このシリーズがお気に召すロマンスファンは多いと思います。

本作で公爵の登場はちょっと遅め、恋心を自覚したBeaが公爵を避けるように行動しているから仕方ないのですが、二人の丁々発止の会話を楽しみにしている人は前半はちょっと物足りないかも

２作目から、実は両想いであることは読者にはバレバレなのですが、当時の社交界の常識で考えると

26歳→年取りすぎ、適齢期はせいぜい19歳くらいまで20歳過ぎたら焦らなきゃ
紳士階級だけど貴族の家じゃない→公爵夫人には最低でも伯爵家の令嬢じゃなきゃ
容姿が平凡→絶世の美女なら、持参金も身分も無しだって公爵夫人になれるかも

公爵が本気でBeaに好意を抱いていたとしても結婚まで至ることはまずないと考えるのが当然で、もしかして？と思っていたとしたら自意識過剰のヤバい女です。
Beaとしては公爵から決定的な言質がなければ結婚する気がある思えないのは当然

前作に登場した東洋趣味の客間に仔ライオンをペットにしている伯爵夫人はBeaの母親の友人。亡き友人に代わってBeaに良縁を世話しなければと乗り出して来ます。Beaが公爵に好意を抱いているのは承知しているけれど、結婚は絶望的に望めないので早いと気持ちを切り替えるように勧めます。


ミステリーでなければ出てこない語彙が豊富で、今回は毒物系
belladonna は知っていたけれど、以下は知らなかった―

Strychnos nux vomica マチン(ストリキニーネを含む木の実)
monkhood トリカブト
hemlock ドクニンジン
prussic acid 青酸

apothecary 薬剤師　現代では pharmacist

本作で一端の区切りを感じたので、最低でも本作までは翻訳して欲しいところ
それは第一作の売れ行き次第でしょうか？　ガッツリ売れて欲しいです！

第一作目の翻訳はこちら

公爵さまが、あやしいです 行き遅れ令嬢の事件簿 (コージーブックス)

• 出版社/メーカー: 原書房
• 発売日: 2023/02/09
• メディア: Kindle版